サンライズアニメ『機動戦士ガンダムSEED』『SEED DESTINY』の二次創作サイトです。同人要素を多数含んでおりますので、同人を知らない方、嫌悪感を抱く方はご遠慮下さいませ。

いらっしゃいませ。
こちらはサンライズアニメ『機動戦士ガンダムSEED』及び『SEED DESTINY』の アスラン×カガリ のカップリングを溺愛する二次創作サイトです。
同人要素を多数含みますので、同人をご存じない方、カップリングに嫌悪感を抱く方は素早くこのページから脱出することをおススメします。
『むしろ望むところだ!』という方は、少しでも楽しんでいただければ幸いですv
*一部、大人向けな表現を含む文章、イラストもございますので18歳未満の方は十分ご注意下さいませ。
*閲覧は自己責任でお願いいたします。


お待たせいたしました!「俺カガ」新刊のご案内
予想外に時間がかかってしまいましたが、「俺カガ」ハロウィン本を本日より通販を開始いたします。
合わせて、『Albireo FINAL』合わせで発行しました『俺のカガリ~南国の夜の夢~』も通販開始いたします。

※新刊は2冊とも大人向けシーンを含むR-18作品です!18歳未満の方はご購入できませんので、くれぐれもお気を付け下さいませ!

【新刊】
『俺のカガリ~俺の誕生日とかぼちゃの悪戯~』
俺のカガリ~俺の誕生日とかぼちゃの悪戯~表紙
A5/P48/コピー本/小説/R‐18
●200円

試し読みが今回やけに長いです(汗)




↓【試し読み】








【俺のカガリ~俺の誕生日とかぼちゃの悪戯~】

俺は今、カボチャに囲まれている。
どうしてそんなことになっているかと言えば、たまたま俺が公務でオーブに来た時が、オーブではハロウィンというイベントのシーズンだったというのが理由だ。
「これは…カボチャの収穫を祝う祭りか何かか?」
広いはずの応接間が足の踏み場もないほど、部屋の至るところにごろごろと山積みされた大小様々なカボチャ(何故か全部オレンジ色の品種だ)のあまりの量の多さに俺が呆気に取られていると、床に胡座をかいて座るという姫君にあるまじき格好でカボチャを抱え込み、中をくり抜いていたカガリがビシリと俺を指差した。
「違う!カボチャの収穫期はもっと前だ。お前、普段自分が食べてるものがいつ頃旬なのかくらい知っておいたほうがいいぞ!自分で野菜を育ててみるのもオススメだ!ほら、これをやるぞ」
室内の有り様について尋ねただけなのに、何故か健康的な食生活について説教された挙句、俺はカガリからカボチャの種を手渡された。彼女は王宮内に自分の菜園を持ち、野菜を育てているらしい。このカボチャはその菜園で作られたものだそうだ。もっとも公務で日々忙しい身であれば、普段の手入れはほとんど担当者にお任せらしいが、それでも愛着はあって、暇を見つけては足を向けているらしい。
戸惑いつつも俺がお礼を言うと、カガリは子供のようににっこりと微笑んだ。
これが俺の婚約者で、地球にあるオーブという小さな島国のお姫様だ。『お姫様』というのは比喩でもなんでもなく、正真正銘、歴史の古い由緒正しい王家の王女だが、性格はこんなふうに気さくで屈託がない。MSを操り、軍籍もある勇ましい姫君でもあり、普段から今着ているような軍装で元気に走り回る。けれど優しくて人の心には敏い人で、政治的なものの考え方をする反面、情に厚かったりもする。そして、恋人の俺にはこんなふうに無邪気で可愛い顔を見せてくれたりもする。完全な政略結婚で、俺も彼女もそれなりに仲良くなれればいいか、くらいの期待で見合いをしたんだが…。
幸運なことに俺たちは恋に落ちた。今や彼女は俺にとってなくてはならぬ存在で、俺は一刻も早く結婚してオーブに移住したいと思っているほどだが、プラント国籍の俺はすでに成人でも、同い年の彼女はオーブの法ではまだ未成年だ。婚約はできても結婚はできない。いずれオーブ国籍となり婿入りする身なので、俺がオーブの法に合わせなければならない。
「これを31日までに全部くり抜かなきゃいけないんだ」
「中身は捨てるのか?」
「こちらは観賞用の品種で、食用には向きません」
食べ物だろうに…と思う間も無く、すぐさまマーナが答えながら、俺にもナイフを手渡した。…手伝えということか。
一応国賓の俺をも容赦なくアゴで使う気満々のカガリの乳母からナイフを受け取り、俺はカガリの隣に腰を下した。室内ではあちらこちらでメイドたちがおしゃべりを楽しみながらも手は止めずにカボチャをくり抜いている。この部屋に山積みされているのがいくつくらいあるのかは分からないが、全部を仕上げるのはかなりの労力が必要だろう。ただ中をくり抜くだけではなく、側面に顔のような穴も開けるらしい。
「アスラン、ハロウィンを知らないのか?」
機械工学が得意分野の完全な理系の俺は、季節のイベントや宗教的な由来の行事となると、ぱっと頭に浮かぶのはせいぜいクリスマスくらいだ。以前のバレンタインも、言われて初めて「ああ、そういえばそんな行事があったな」と思い出した程度の認識だった。その手の知識において、伝統と歴史あるオーブで千以上の儀式と他にも日々多くのしきたりを守って暮らす王女の足元には及びもつかない。しかもこの国は取り込んだ様々な行事が独自の進化を遂げている国だ。
「カボチャの収穫祭…じゃないとすると、ちょっと分からないな…」
俺が困った顔をすると、カガリは楽しそうに説明してくれた。
「オーブのハロウィンは悪い精霊とかに悪さをされないように、魔を打ち祓うための行事だ。まぁ市井の人たちは仮装パーティーしたりする程度だけどな。悪霊に扮した子供たちが近所の家々をまわって『トリック・オア・トリート!』って言うんだ」
「『トリック・オア・トリート』?」
「『お菓子をくれなきゃイタズラするぞ!』って意味だ。そう言われたらその家の大人はお菓子をあげる。くれなかったら本当にイタズラしていいんだぞ」
「へぇ…」
悪霊祓いと言うよりは、お化けの仮装フェスティバルのような感じだな。
この国はハウメアという女神を最高神とする多神教なせいか、他国の宗教的な風習を自分たちの生活に取り入れることに躊躇いはなく(バレンタインの時もそうだったが)、単なるイベントとしてなら遠慮も会釈もなく様々な行事が取り入れられている。ハロウィンもどうやらその一つのようだ。俺はあまりよく知らなかったが、カボチャをくり抜いて、中に灯りを入れて飾ったり、仮装パーティーをするのが一般民衆の楽しみ方のようだ。
だがオーブ王室は違う。バレンタインにさえ特別な儀式があったオーブの王室だ(カガリが精進潔斎して俺に贈るチョコレートを作って清めたとか、婚約者がいる場合は夜を共にするとか)。ハロウィンにも当然なんらかの儀式があるのだろう。しかも悪霊だの悪魔だの言われると、〝魔法〟だとか〝魔力〟なんてものとも深い関係のある王室ゆえに、なおさら何かあるのだろうとしか思えない。
聞けば、やはりハロウィンは魔力が高まる時で、不思議なことも起こりやすいという。王宮のあちこちにこのカボチャのランタンを飾り(これに神殿から送られてきた聖火を灯すことで魔を祓う効果があるとか)、ハロウィン当日はハウメア神殿で悪霊祓いの儀式も行う。あとは仮装パーティーも開かれるようだ。この仮装は世俗の楽しみとしての目的もあるが、お化けや悪魔に扮することで、人間に悪さをしようとしている悪霊から見つかりにくくするという意味もあるそうだ。
「祓いの儀式までは、悪い言葉を使ったり、悪霊が好むような行動は取らないようにするんだぞ。取り憑かれるからな!」
「了解」
魔法が息づくこの国では、悪霊に取り憑かれるというのも本当にありそうなので、俺は素直に頷いた。バレンタインの時に、女性に贈り物をしてはならないというしきたりを破ってとんでもない目に遭ったことは忘れられぬ事件だ。俺とカガリが結婚できないどころか、下手をしたらアスハ家の血筋が絶えるとか、オーブとプラントが戦争になる危機さえ孕んだ事件だった。オーブのしきたりは決して軽んじてはならないのだ。
今回は全てカガリの言う通りにし、言われなくとも自分の方から行動の全てはカガリにお伺いを立てるくらいの気持ちで臨もう…と心に決めながら、俺は手渡されたカボチャを見よう見まねでくり抜いてみた。
「…お前、初めてのくせに上手いな……器用なやつ…」
じっとりと嫉妬の眼差しを向けられて俺は苦笑した。確かに彼女はあまり器用な方ではないようだ。今作っているカボチャの仮面も、かなり個性的な顔付きだ。そういえば、以前バレンタインでもらった手作りチョコレートも随分個性的な形をしていたな……悪魔の槍でも模したのかという感じの形にしか見えなかったが、本人曰く『ハートだ』とのことなので、そのセンスたるや……相当前衛的だ(…ということにしておく。彼女の名誉のために)。味は非常に美味しかったので俺としてはなんの問題もない。
「こういう手作業は好きなんだ」
「そうか……まあ、アレが作れるんだから当然だよな…」
カガリがちらりと視線をやった先には、以前俺が贈ったペットロボットのハロが転がってゆく。ボディは緑色にして贈ったのだが、今はハロウィン仕様だとかでオレンジ色に彩色された上に、後頭部に濃い紫色でコウモリのシルエットのような模様がペイントされてある(オレンジや紫がこの行事のカラーなのだそうだ。それでカボチャもオレンジの品種なのか)。
しばらく雑談をしながらごりごりやっていたんだが、一つ仕上がった時点で時間を見て、俺は呟いた。
「…けっこう時間がかかるな」
「生のカボチャは硬いからなぁ」
「もう少し早く取り掛かれなかったのか?」
王宮の恒例行事だ、事前の段取りの見通しくらい当然立っていただろうし、こうしたことは余裕を持って準備にかかるだろうに…と思っていると、カガリは苦笑した。
「いや、例年はこのくらいの時期で充分だったんだが、今年は豊作でな。小さいのも全部合わせると事前に聞いてた数の倍くらいできたんだ。せっかく採れたんだから使ってやらないと可哀想だろう?」
変なところで貧乏性なのか博愛主義なのか微妙な発言をしながら、カガリはそこで何故かはにかむように俯いた。
「それに…今年は他に予定も入ったし…」
「他の予定?…ああ、俺が来たことか?」
俺は首を傾げながら尋ねた。他国の使節を…しかも今や王女の婚約者となっている人間をそつなく迎えるのはなかなか大変な仕事だろう。だが今の言葉のどこにこんなふうに嬉しそうで恥ずかしそうな表情をする内容があったのかさっぱり分からない。
すると怪訝な顔をする俺を見て意思が伝わらないことを察したカガリが頬を膨らませた。
「お前が来たことっていうか、ハロウィンの二日前!29日はお前の誕生日だろう!?」
「…ああ」
そういえばそうだな。忘れていた。自分の誕生日なんて、一つ歳を取る意味があるくらいで、特に騒ぐ日でもないと思っていた。
「もぅ!お前だってプラントで誕生パーティーとかやったことくらいあるだろ?だからこれは是非ともお祝いしなければ、ってお父様たちが言い出してな。私、てっきり招待状がくるんだと思って待ってたら、お前の方が公務で来るなんてギリギリで連絡してくるからびっくりしたんだぞ!急いで準備したんだからな!」
「え…わざわざ?というか、プラントに来るつもりだったのか?」
俺が驚いて言うと、カガリはますます機嫌を悪くした。
「婚約者なんだから当たり前だろ!…って、まさか私を呼ばないつもりだったのか!?私に隠れて他に女をいっぱい呼ぶつもりだったんじゃないだろうな!?」
…何故、俺が婚約者に隠れて〝女〟を呼ぶと心配されねばならないのか、非常に物申したい部分はあったが、俺はとりあえず説明した。
「いや、今年はもう訪問の予定が入った時点で誕生パーティーは中止と決まっていたから…それに仮にやるとしても誰が招待客になるかなんて、俺の決められることじゃないよ。父と執事が決める。もちろんするならカガリは真っ先に招待されると思うが」
今年は公務が入ったので中止になったが、例年、一応〝俺の誕生パーティー〟という名目で父と交流のある政財界の人間たちが集まる社交の場は設けられる。つまり、俺の誕生日にかこつけて全然まったく、『俺の誕生日を祝うパーティーではないもの』が開かれるのだが、これは権力者や有力者の家族の宿命のようなものだ。だから例えば俺に婚約者がいなくて、父が俺に相手を見つけようなどと考えた場合、若い独身女性が大勢招待される、ということもあるだろう。
父はこういう場所で俺にもしっかりとコネクションを作ってもらいたいのだろうが、俺は有効活用できた試しがない。作り笑顔で挨拶くらいはできるが、基本、内向的で口下手、人付き合い下手な俺は、積極的に人に自分を売り込むような会話など不可能だ。一言も言葉が出てこない。もちろん疲れるだけなので、こうした場は全く好きではない。中止になってほっとしたくらいだ。…まぁ、開かれるのなら〝オーブの王女〟なんて大物は最も身分が高い賓客だから最優先で御招待だ。立食形式でなかった場合なら、主催者の俺や父より席順が上…というか一番上座だろう。本来カガリは、俺の婚約者でもなければ個人が〝誕生パーティー〟などという一応私的なパーティーになどおいそれと呼べる相手ではないのだ。本当に来るならプラント中の大物が挨拶したいと殺到し、俺の誕生パーティーは空前の大盛況となっただろう。単に政治的な意味合いだけでなく、カガリの人気はプラントでは高いし、面識を得て損はない。
「…まぁ、オーブで開かれたって、メンツが違うだけで多分プラントでのものと似たようなものだろうけどな。こっちだって臣下たちが決めたことだし。でも少なくとも私だけは心からアスランの誕生日をお祝いするつもりだからな!」
俺の自嘲的で投げやりな声に察したのか、カガリは苦笑いを浮かべながら付け足したが、最後に励ますようににっこりと笑いかけてくれて、俺も微笑んだ。
訪問中の国賓が滞在中に誕生日を迎えるとなれば、そのような席が設けられるのは当然のことだ。俺がそうした席を好まない性格だというのはこの際関係がない。何もしないわけにはいかないのだから。もちろん外交で来ているのだから、俺だってありがたくお受けするだけだ。むしろ自分が主催者じゃないだけ楽で助かる。
自分の誕生日など、これまで特別な日とも思ってこなかった。パーティーなどの騒がしいことは好きではないので開かれたところで嬉しいとも思わなかったし、祝われたいと思える人もいなかった。ましてや『プレゼントが欲しい』などという金品への欲など皆無だ。けれど、彼女から『お誕生日おめでとう』と輝くような笑みで言われるのは想像するだけで幸せを感じる、なんだかこそばゆいような嬉しさだ。初めて自分の誕生日が幸せな日だと思えた。言葉だけでこれほど俺を幸せにしてくれる人など、彼女の他にはいない。
「君がいてくれるだけで嬉しい」
偽りなき本心から俺がそう言うとカガリの頰がぱっと染まり、恥じらうように顔が俯けられた。こんな言葉だけでこんな顔をしてくれるんだから可愛いよなぁ。
可愛いとなおさら構いたくなるのは自然の摂理だ…と思いながら、俺はカガリの頰に手を伸ばした。
「こ、こんなところで…」
周囲で働くメイドたちに視線を走らせながら、カガリは咎めるような視線を俺に向けたが、俺は止めるつもりもなければ悪いことをしたつもりもなかった。恋人の頰を撫でるくらい、何が悪い。
口ではそう言いながらされるがままになって困っているところが可愛くて、俺は調子に乗って、耳元に顔を近付けて囁いた。
「誕生日のプレゼントはカガリがいい」
「……っ…!」
カガリは飛び上がるように俺から顔を離し、茹で上がったように真っ赤になりながら、信じられないものを見るかのような目で俺を見ている。
「おま……なんてこと言うんだ…」
「だめなのか?」
「だめっていうか……いや、だめじゃないけど…って、違う!そうじゃなくて!やっぱりそんなのはだめだ!」
ちっ…と心の中では舌打ちをしたが、表面上俺は恥ずかしがるカガリに微笑みながら余裕のあるふりをした。まぁ、恥ずかしがりのカガリのことだから、却下される可能性は高いと思っていた。
「残念」
カガリは赤い顔のまま眉をひそめて俺を見ている。
「残念ってお前……だってそれ、プレゼントにするなんて変じゃないか?」
「そうか?恋人同士なら普通のことじゃないか?」
「そっ、そうなのか!?」
カガリが驚いたように目を見開く。…ああ、カガリは真面目だし、しきたりの多い歴史のある王室の育ちだから、巷ではこんな恋人同士にしか許されないような恥ずかしくて破廉恥なプレゼントが存在することを…仲の良い恋人同士ならこういうのもアリなのだということを知らなかったのか…まあ、お姫様なんだから当然だよな。そんな話を姫の耳に入れることなど、マーナが許さなかっただろう……それが婚約者候補の男でなければ。
こういう、親密な仲でなければ許されない類いのジョークや悪戯を知らないということは、今まで誰もカガリに冗談でもそういう親密な悪戯をしなかったということで、嫉妬深くて独占欲の強い俺は嬉しくなった。俺が婚約者になる前にこうした悪戯を聞いたことくらいはあってもおかしくはないほど、彼女の周辺には王女の婿になろうという男たちが常にいた。彼女自身がそれを嫌がらずに受け入れていたのだから、何があったとしてもおかしくはなかったはずだ。彼女のお相手たちはみんなお上品だったのか、それともこれほどのことを言うほど仲良くはなれなかったのか…どちらにしても俺にとって嬉しいことだったのは間違いない。
急に機嫌が良くなった俺をカガリは怪訝な顔で見ていたんだが、まだ納得がいかないような顔をしてから言った。
「でも、だって……その……プレゼントにする以前に私はもう…お前のものじゃないか…」
恥ずかしそうに頰を染めておずおずと言葉を紡ぐカガリに、俺は心臓が大きく脈打ち、一気に頭に血が上って全身が熱くなった。…そうか…知らなかったというよりは、もうすでに俺のものだからプレゼントにできないのでは?という疑問だったのか…。
可愛いことを言う恋人に、俺はカボチャをくり抜いているどころではなくなって、ひょいと首を伸ばして盗むようなキスをした。
「!」
カガリが驚いて顔を引くが、もう奪うものは奪ってしまった。カガリは慌てて周囲に目をやる。メイドたちもマーナも行儀良く目を逸らしているが、さざ波のような囁きは聞こえるので、みんな見ていたのだろう。俺たちの会話自体は声をひそめていたから内容まではっきりと聞こえることはなくても、行動は丸見えなのだから当然といえば当然だ。けれど、こんな可愛いことを言う恋人にキスをせずにいられるわけがない。本当はこのままベッドに連れ込んで押し倒してやりたいくらいだ。俺のものだというのなら、いいだろう。
「こっ、こらっ!今日は人がいっぱいいるからだめだ!」
四六時中使用人や臣下に囲まれて一挙一動を見られている割には、カガリってこういうことを気にするよな…俺の方がよっぽど庶民の生まれ育ちなのにな。こんなふうに人が常に側にいるのは実際、俺の感覚では慣れない。俺はもともと騒がしいのや人混みが好きではないし。けれど将来的には慣れなければいけないものなのだろうと割り切っているし、どうもいちゃいちゃすることに関してはあまり意識できないというか、周囲の目よりも先に衝動が勝ってしまうというか…俺だって決して人に見られるのが良いだなんて思っているわけではないんだが…。
「人がいなければいいのか?」
にやにやしながら上げ足を取るようなことを言ってからかうと、カガリは真っ赤になって言葉に詰まった。
俺は笑った。正直だなぁ、カガリ…嘘でも「だめ」とは言えないところが可愛いよな…つまり人がいなければいいと思ってくれているんだ…。
俺はリンゴのような頰を優しく撫でてからふにふにと揉むように手を動かした。カガリは唇を噛み締めて悔しそうに上目遣いで睨むが、黙ってされるがままになっている。なんて可愛い人なんだろう。またキスしたくなる。
俺は微笑みながら顔を近付けた。すると今度は気付いたカガリが慌てて俺の胸を押し返した。
「だっ、だめっ!」
「そうか、でもしたい」
「え、えぇっ!?そんな…」
だめと言えばすんなり引き下がるとでも思っていたのか、俺がしらりと食い下がるとカガリは狼狽えた。おろおろしているうちに俺はカガリに迫った。悪いが逃すつもりはない。
「わ、わああぁ!だめだっ…!」
その時、慌てるあまりカガリは持っていたカボチャを振り上げた。カガリがその時作っていたのは、たまたまランプではなく仮面だった。頭の上の方に穴を開けてくり抜くランプではなく、下からくり抜いて頭に被る。仮装パーティーの際に被ったり、魔除けの置き物として飾ったりするものだそうだが……それが俺の頭に向かって振り下ろされた。
カポッとかスポンとか、マンガのような音は現実には立たなかったが、カボチャを被らされた俺はさすがに動きを止めざるを得なかった。俺のキスを止めるには有効な手段だったと認めざるを得ない。
「………」
「あっ…すまない!つい……っていうか……ぷっ…あははは…!」
はっとしてすぐに謝ったものの、カボチャを被った俺の姿は滑稽だったらしく、カガリは笑い出してしまった。メイドたちからもあちらこちらからくすくす笑う声がする。俺は笑われておどけられるほどノリの良い性格でもないので、ただ黙っていたんだが、気を悪くしたと勘違いしたカガリが涙を拭きながらまた謝った。
「…いや、本当にすまない。気を悪くしないでくれ。お前には私が作ったこんな不格好なやつは似合わないよな。どうせ被るならもっと上手くできてるやつを……」
言いながら手を伸ばしてカボチャを取ろうとして……すぐさま俺もカガリも異変に気付いた。抵抗がある。ただ被っただけのカボチャの仮面が……抜けない。
「………」
「………」
俺たちは顔を見合わせた(俺はカボチャ越しなので、カガリの顔はかなり遠くに見えたが)。カガリが立ち上がり、今度は真上から慎重にカボチャを持ち上げる。
「……………っ……ちょっ、待て、それ以上は痛い」
だんだん引っ張る力を強くされ、頭皮が剥がれそうな痛みを感じて俺はカガリを止めた。正面に座り直し、穴の間から俺の顔を覗き込んできたカガリの顔色は悪い。
「…どうしよう…これってやっぱり……」
「………」
俺は言葉にはしなかったが、俺たちの思いは完璧に通じ合っていた。
──〝妖精〟の仕業、だろうな…。
俺が肩を竦めると、カガリは頭を抱えてしまった。
スポンサーサイト

Comment

 秘密にする

Copyright © 硝子球儀. all rights reserved.